Mathematical Linguistics Vol. 26

第26巻目次

26巻1号 (2007年6月19日)	26巻2号 (2007年9月18日)	26巻3号 (2007年12月18日)	26巻4号 (2008年3月)
26巻5号 (2008年6月)	26巻6号 (2008年9月)	26巻7号 (2008年12月)	26巻8号 (2009年3月)

26巻1号 (2007年6月19日発行)

種別:
論文
著者:
鑓水兼貴
題名:
活用形における共通語の分布パターン『方言文法全国地図』第２・３集データの多変量解析
ページ:
1-18
ディスクリプタ:
『方言文法全国地図』，数量化Ⅲ類，共通語形，大規模な方言データベース，周圏分布
概要
本研究は，インターネットで公開されている国立国語研究所編『方言文法全国地図』（以下GAJ）第2・3集のデータを用いて，動詞・形容詞等の活用形における共通語形の分布について分析したものである．GAJの各調査地点での共通語形使用の有無について，データ行列を作成し，多変量解析法の一つである数量化Ⅲ類を適用して分布パターンを考察した．
その結果，共通語形の分布には，第一に関東方言的特徴，第二にかつての中央語としての関西方言的特徴，第三に古い時代の中央語の残存として関東と九州に周圏分布をなす特徴，という三つの主要なパターンがみられた．このことは，日本語の中心が関西から関東へと移動したという歴史的側面が，共通語の分布パターンに反映しているものと推測される．
種別:
調査報告
著者:
横山詔一・エリク＝ロング
題名:
異体字の単純接触効果に関するロジスティック回帰分析: コーパス４種と最尤推定法を用いた検討
ページ:
19-30
ディスクリプタ:
異体字，選好，ロジスティック回帰分析，最尤推定法，コーパス
概要
日本の新聞で使用頻度が一番高い漢字は「日」であり，その使用率は新聞紙面に登場する漢字の1.4%を占める（横山・笹原・野崎・ロング，1998）。新聞をよく読む人であれば，一生を通じて「日」に接触する頻度は膨大なものになるだろう。この種の言語接触は，どのような単純接触効果（mere exposure effect）を引き起こすのだろうか。ここで単純接触効果とは，なじみ（親近度：familiarity）のない新奇な刺激に繰り返し接触しているだけで，その刺激に対する好意度が高まる現象をいう。ある商品や政党の宣伝がマスメディア等で全国に流れた場合，その商品や政党に対する接触頻度は社会全体で高くなり，大規模な単純接触効果を生み出す可能性がある。ただし，その効果を検証するのは容易ではない。商品や政党の選好（preference）は多くの要因が複雑に絡む。一方，言語における単純接触効果は，社会言語学や言語心理学の要因に狙いを絞ることができる。接触頻度と好意度の関係を正確に究明したいとき，言語は格好の刺激材料となるだろう。そのための方法論を経済学，経営学，政治学は十分には持っていない。
本研究は，新聞，百科事典，小説の3 つのジャンルにおける4 種類のコーパスを用いて新旧両字体の使用頻度をカウントした。そのデータから一般対応法則（理想自由分布理論）に立脚したモデルのパラメータを最尤推定法で求めた。実験1 では字体選好課題を実施した。小説コーパスにおける新旧字体間の頻度比の対数を説明変数とした場合，旧字体選択確率の予測値と実測値の決定係数は最高で. 697 を示した。実験2 では字体親近度比較課題を実施した。小説コーパスにおける新旧字体間の頻度比の対数を説明変数とした場合，旧字体選択確率の予測値と実測値の決定係数は最高で.785 に達した。
文字政策が変化した影響はいずれ日本全国に及び，大規模な単純接触効果として観測される可能性がある。そのデータ解析に本研究の手法が有用となるだろう。

26巻2号 (2007年9月18日発行)

種別:
論文
著者:
崔文姫
題名:
日本語学習者の発話に対する日本人の評価: 韓国人の日本語学習者に対する印象とその印象に影響を及ぼす要因
ページ:
47-63
ディスクリプタ:
韓国人学習者の発話, 日本人の評価, 対人印象, 因子分析, パラ言語及び非言語的要素
要約:
本稿は、韓国人の日本語学習者の発話に対して日本語母語話者が抱く印象を明らかにし、その印象に関わる要因を探ることを目的とする。まず、131名の母語話者に対し、学習者の「言語・パラ言語・非言語的特徴」と「対人印象」に関する評価項目をそれぞれ20項目含む質問紙調査を行い、主因子・バリマックス回転を用いて因子分析を行った。その結果、母語話者が学習者の発話に対して抱く印象形成には「社会的望ましさ」「個人的親しみやすさ」「活動性」という3つの潜在的観点が働くことが明らかになった。とりわけ、「信頼できる」「まじめだ」「礼儀正しい」等の要素に代表される「社会的望ましさ」という観点が最も強く働いている。また、その観点には「あいづち」「間の取り方」「視線」等のパラ言語及び非言語的要素が最も影響を与えている。これらのことから、韓国人学習者が、よい印象を与えながら日本人と円滑にコミュニケーションを取るためには、パラ言語及び非言語的要素が重要であることが示唆されている。
種別:
ノート
著者:
李在鎬・鈴木幸平・永田由香・黒田航・井佐原均
題名:
動詞「流れる」の語形と意味の問題をめぐって
ページ:
64-74
ディスクリプタ:
語形の意味記述，多変量解析，共起語
要約:
本研究では，「流れる」の使用実態を次の方法でコーパスベースに調査した: 「新潮文庫」，「新潮新書」，「読売新聞」の三つコーパスから「流れる」の KWICデータを収集し，「タ形，ル形，テイル形，テイタ形」に多変量解析を行なった．
解析の際，サンプル文のガ格の名詞 (例えば「川が(南に)流れていた」の「川」) を，その意味特徴，連語的意味，格関係など，合計18個の変数で特徴づけ，階層的クラスタ分析で類似度を判定した．それと同時にガ格名詞の所属クラスタと実際の語形でクロス集計を取り，語形とガ格名詞の意味クラスとの相関とその傾向を見た．
以上の多変量解析を用いた調査の結果，語形ごとに共起するガ格名詞の意味クラスに相違があることが明らかになり，語形と意味の問題には複雑な関係が存在する可能性を示した．また，従来のテンス・アスペクトモデルはこうした事実を考慮せず，過度の単純化をしている可能性が示唆された．

26巻3号 (2007年12月18日発行)

種別:
論文
著者:
横山詔一・真田治子
題名:
多変量Ｓ字カーブによる言語変化の解析：仮想方言データのシミュレーション
ページ:
79--93
ディスクリプタ:
言語変化、Ｓ字カーブ、ロジスティック回帰モデル、グロットグラム、最尤推定法
要約:
言語変化は一般に「遅→速→速→遅」というS字カーブの過程をたどって伝播するとされる。その記述研究は厚みを増しているが，言語変化のS字カーブに関する理論研究はきわめて少ない。そこで，本研究は仮想方言データ（グロットグラム）を使って，多重ロジスティック回帰モデル（multiple logistic regression model）で解析する新たな手法を提唱し，言語の時系列変化と地理的変化についてシミュレーションを行った。多重ロジスティック回帰モデルは， pを比率（確率）， Zをa1・X1＋a2・X2＋a3・X3＋・・・＋bというような重回帰式に類する線型結合，対数の底をeとして，式〔１〕で示される。
```
   log{ p／(1－p) }＝Z        〔１〕
```
p／(1－p) をオッズ，log{p／(1－p) } をロジットという。ロジスティック回帰モデルは，左辺がロジット，右辺が重回帰式の形をなす。式〔１〕は変形すると式〔２〕となる。
```
   p＝1／{1＋exp(－Z )}       〔２〕
```
グロットグラムに代表される方言データの解析では，この多重ロジスティック回帰モデルを用いてX1 ，X2 ，X3・・・に年齢，地点，場面差などの変数をあてはめることで，名義尺度を含む複数の属性を同時に分析したり，撹乱要因を除外して分析したりすることができる。また実データでよく見られるデータの一部欠損にも，高い精度の予測が期待できる。さらに一般的な文献調査でも語彙量・語種比率の変化のほかに，作品のジャンルや書き手の性別などの情報を組み込んだ，広い範囲の言語変化の分析に応用が可能である。
種別:
ノート
著者:
宮島達夫
題名:
連体修飾語「～の」の重複
ページ:
94--96
ディスクリプタ:
連体修飾語「Ｎの」、雑誌九十種、英語、韓国語、中国語
要約:
日本語では，連体修飾語「Ｎの」が重複して出現することがめずらしくない．雑誌九十種のデータでは約１９％が重複表現のなかにある．英語・韓国語・中国語ではこのような例は少なく，ほかの表現がえらばれるようである．

種別:
その他
題名:
第５１回大会報告
ページ:
97--108

26巻4号 (2008年3月18日発行)

種別:
調査報告
著者:
鈴木崇史・影浦峡
題名:
総理大臣国会演説における基本的文体特徴量の探索的分析
ページ:
113-122
ディスクリプタ:
クラスター分析、主成分分析、助詞・助動詞分布、総理大臣国会演説、文長
要約:
本稿では，総理大臣の政治スタイルや個人的特徴をスピーチスタイルから明らかにするための基礎調査として、総理大臣国会演説における文長、助詞・助動詞相対頻度分布を調査した．結果，時代がこれらの特徴量に強く影響するものの、総理大臣ごとの差異も観察された。時代という要因を統制することで、スピーチスタイルから、より明確に、総理大臣の政治スタイルや個人的特徴を明らかにすることができると結論づけられる。
種別:
調査報告
著者:
亀山寛
題名:
日本語単語頻度数におけるジップ則
ページ:
123-138
ディスクリプタ:
単語頻度数、日本語単語、ジップ則、現代雑誌90種、現代雑誌70誌、英単語
要約:
日本語単語に関してはジップの法則は当てはまらないというのが定説であった。本研究では、英単語における頻度数の分布と比較するために。「現代雑誌90種」と「現代雑誌70誌」（国立国語研究所）を対象として、自立語だけでなく、非自立語を含めた場合の正確な日本語頻度数を算出し、分析した結果、次の結論を得た。　
1. 延べ語数のサンプル数1,000個から5000個において、log(p)-log(n)（p;単語の使用率，n;順位）プロットより，べき指数は『現代雑誌90種』で，-1.031から-1.065までの値であり，
2. 延べ語数上位1,000個のデータにおいてE. V. Condonによる英単語の結果と日本単語（『現代雑誌90種』）とは同様な振る舞いを示す、日本語単語の使用率は順位に反比例していて、非自立語を含めた日本語単語においても、ジップ則が成立している結果が得られた。
種別:
学会報告
著者:
真田治子
題名:
5th Trier Symposium on Quantitative Linguistics 　　　（2007年12月7日～8日　於ドイツ・Trier大学）
ページ:
139-140

26巻5号 (2008年6月発行)

種別:
調査報告
著者:
田野村忠温
題名:
日本語研究の観点からのサーチエンジンの比較評価: Yahoo!とGoogleの比較を中心に
ページ:
147-157
ディスクリプタ:
サーチエンジン、比較評価、データ量、検索の信頼性
要約:
日本語の表現、特にその使用頻度について調べるという目的に最も適したサーチエンジンはどれかという問題意識に基づき、日本語を扱えるサーチエンジンを量と質の二面から比較評価した。
調査の結果、サーチエンジンが扱う日本語データの量に関しては、Yahoo!が数あるサーチエンジンの首位を占めることが分かった。そのデータ量は、Googleの３倍程度で、30兆バイト（15兆文字）程度と推定される。これは一社の新聞記事約３万年分に相当する。
サーチエンジンの検索の質に関しては、検索時に表示されるヒット件数の論理的整合性と安定性という２つの面からYahoo!とGoogleを比較した。その結果、２つの面のいずれに関しても、Googleは問題が大きいことが明らかになった。
　以上のことから、日本語の表現を検索し、そのヒット件数を見る目的にとって、現時点で最も適したサーチエンジンはYahoo!であるとの結論を得た。
種別:
ノート
著者:
戸嶋祐介・皆川直凡
題名:
依頼コストと依頼の相手による依頼表現の変動
ページ:
158-164
ディスクリプタ:
依頼表現，間接性，依頼コスト，依頼の相手，依頼場面
要約:
本研究は，依頼内容のコストや依頼する相手が依頼表現に与える影響を調べることを目的として行われた。依頼相手として目上の人と親友を想定し，依頼コストの高い場面と低い場面を設定し，間接性の高さを変数とする４種類の依頼表現についての適切性の評定を72名の大学生に求めた。その結果，依頼コストと依頼表現の間に関連があり，コストの低い場面では直接的な依頼表現が適切と判断され，コストの高い場面では間接性の高い接続助詞終止形が適切と判断される傾向が見いだされた。また，依頼相手と依頼表現との間にも関連があり，目上の人に依頼する場合は，接続助詞終止形の依頼表現よりも否定疑問形の方が適切と判断され，親友に依頼する場合は，否定疑問形の依頼表現よりも接続助詞終止形の方が適切と判断された。本研究の結果から，日常の依頼場面においても，依頼内容のコストや依頼相手によって，適切性の判断に基づき，依頼表現を使い分けていることが推察される。今後の課題として，ポライトネス理論を考慮した必要十分な対人配慮水準の設定，依頼の相手とコストとの関係の精緻化，及び調査対象年齢層の拡充があげられる。

26巻6号 (2008年9月発行)

種別:
論文
著者:
伊藤雅光
題名:
『古事記』の音読注に見られる「言語の経済性」について
ページ:
unknown
ディスクリプタ:
古事記, 音読注, 字数音読注, 最少労力の法則, ジップ, ケーディング, 計量国語学史, 単位長分布, 度数分布
要約:
小稿の目的は『古事記』分注に見られる音仮名列の長さに関する数字の度数分布がジップの「最少労力の法則」に従っていることを実証することにある．『古事記』の分注にはいくつかの種類があるが，そのなかでも本文で使用されている音仮名の字数を記述する音読注（字数音読注）を対象にし，その字数，つまりは音仮名列の長さの度数分布を集計した．その結果，２字が最高度数比率を示し，その他は字数が多くなるにしたがって度数比率が下がっていくことがわかった．
ただし，字数音読注だけでは偶然性による偏りが反映していることも考えられるため，本文全体で使用されている音仮名列の長さの分布状況も調査した。その結果，それも最少労力の法則に従っていることが明らかになった。ここから，字数音読注の付注行動が本文全体の音仮名列を母集団とする疑似的なサンプリングに相当すると解釈される。
なお，この調査は単語長の度数分布の調査に極めて近い性格をもっている．そこで，すでに単語長の度数分布データが報告されている，現代日本語の新聞の自立成分の調査と，調査単位の認定方法が異なる二つのドイツ語資料（自立成分のみの調査と，自立成分と付属成分を含めた調査）の調査データをも考察対象にくわえ，おのおのの度数分布パターンを比較した．その結果，古事記の音仮名列の調査は自立成分だけを対象とした，新聞とドイツ語資料の調査の結果と同じ度数パターンを示していることが分かった．また，付属成分をも対象に入れたドイツ語資料の調査では単位長１が最高度数比率を示し，その他は，字数が多くなるにしたがって度数比率が下がっていくという「最少労力の法則」のパターンを示している．一方，自立成分の分布パターンは単位長2以降は同法則に従っているが，単位長1の部分は従っていない．この理由は単位長1のデータには付属成分が入っていないため，その分，度数が低くなったからである。つまり，本質的には「最少労力の法則」に従っているということができる．
以上のように，古事記，現代日本語の新聞，ドイツ語資料と，空間的にも時間的にもかなり隔たりがある資料においても「最少労力の法則」が見られる点に，同法則の一般性の高さを看取することができる．
種別:
調査報告
著者:
亀山寛・長谷川哲子
題名:
日本語と英語の語彙における使用率とカバー率
ページ:
unknown
ディスクリプタ:
カバー率, 使用率, 日本語単語, 英単語, 現代雑誌70誌, 現代雑誌90種, ソーンダイク
要約:
本研究は日本語と英語における使用率とカバー率の比較研究を行うために，国立国語研究所より発行された『現代雑誌70誌』や『現代雑誌90種』を対象として，自立語だけでなく，非自立語を含めた，日本語の使用率やカバー率を算出した．英語の語彙に関しては，『ソーンダイクとロージ』の使用率やカバー率を算出した．そして次の結果を明らかにした．
1. 非自立語を含めた日本語の5,000語のカバー率は『現代雑誌90種』で87.8%，『現代雑誌70誌』で86.0%であり，従来の自立語のみの結果より， 6.1%もしくは4.3%高い値が得られたが，英語でのカバー率と比較すると依然として低い値に留まっている．
2. 日本語と英語の使用率において，上位から np語に対してほぼ同程度の使用率をもつことを明らかにした．この場合の日本語の使用率は非自立語を含めて算出した値である．

26巻7号 (2008年12月発行)

種別:
論文
著者:
蓑川惠理子
題名:
商品名の命名メカニズムと再命名―家電製品名の場合―
ページ:
215-240
ディスクリプタ:
命名，商品名，再命名，類概念，意味変化
要約:
再命名とは，従来あるもののところに，同一範疇に入るものが出現して，新しいものの視点から従来のものが再把握されて，名付けられる仕組みである．そして再命名は，新旧並存のときに生じるのであり，新旧交代のときには生じないと考えられる．技術革新の激しい家電製品の場合，特に広告においては，再命名されることはないのではないかと予想された．しかし新聞広告を資料として，固有名だけでなく，普通名による名付けも商品名と認め，電気製品名の商品名構成要素の出現を調査した結果，以下のことが判明した．
1. 新機能を持つ商品が登場し，それが増加傾向を示す段階になって，メーカー側に旧商品を販売し続ける意志があるとき，旧商品に再命名が行われる，
2. 再命名には，旧機能を新機能から区別するために行われる基本型のほか，旧機能に新商品にはない別の機能を付加して行う付加型，かつての新機能で一旦は類概念に吸収されたものを再利用する再登場型の三つの型がある，
3. 再命名には，旧機能の対立概念以外に，旧商品のセールスポイントとするために，非対立的な概念を表す＜機能名＞が用いられることがある，
という3点である．本稿において，商品名にも再命名現象が起こることを指摘しえたことは，商品名の命名メカニズムをより精密化することに貢献するものと考えられる．
種別:
論文
著者:
影浦峡
題名:
日本語専門語彙の有契性構造の分析
ページ:
241-263
ディスクリプタ:
専門語彙，有契性，複雑ネットワーク，語彙グラフ
要約:
本論文では、専門用語の共通語基にもとづき構築した語彙ネットワークの特徴付けを通して、日本語専門語彙の有契性構造を分析する。有契性はもともとソシュールが述べた概念で、恣意性の反意語である。論文ではまず、専門語彙の有契性概念およびその分析における語彙ネットワークの理論的位置づけを明確にする。その上で、農学、植物学、化学、計算機科学、物理学、心理学の６分野の専門語彙を対象に、実際に、有契性構造を分析し、さらにその全体的な構造を可視化する。分析の結果、全体として計算機科学の語彙がもっとも強い有契性を有し、農学の語彙の有契性がもっとも弱いことが明かになった。

26巻8号 (2009年3月発行)

種別:
論文
著者:
井上史雄，江川清，佐藤亮一，米田正人
題名:
音韻共通語化のＳ字カーブ：鶴岡・山添６回の調査から
ページ:
269-289
ディスクリプタ:
音韻，共通語化，Ｓ字カーブ，鶴岡調査，山添調査，経年変化，所要年数
要約:
音韻共通語化についての研究は戦後大幅に進展した．鶴岡市と近郊山添は，それぞれの地域で３回ずつ実地調査が行われ，分析されたので，とりわけ注目に値する地域である．
調査結果全体の傾向としては，言語変化がＳ字カーブを描いて進行することが読み取れた．この発想による理論的カーブに基づいて，言語変化に必要な年数が計算できる．以前の研究で100年以上の所要年数が提示された．今回山添第３回調査のデータが増えたので，新しい計算法を適用して，先行研究の結果を再考した．その結果，変化全体が完了するためには，200年近くが必要と考えられた．
種別:
ノート
著者:
田野村忠温
題名:
日本語研究の観点からのサーチエンジンの評価・続：検索ヒット件数の時間変動のその後とWeb文書量の推計の修正
ページ:
290-294
ディスクリプタ:
サーチエンジン，検索ヒット件数の時間変動，Web文書量の推計
要約:
拙論(2008, 以後，「前稿」とする)で，日本語を扱える各種のサーチエンジンを量と質の二面から比較評価した．前稿の内容は2008年1～2月の調査に基づいていたが， Googleの検索ヒット件数の時間変動の問題は，前稿で見た以上に大幅で深刻なものであることがその後の継続調査により明らかになった．また，Web上の日本語文書の総量については，その後大量のWeb日本語文書を処理する中で，前稿で述べた推計値を50％程度上方修正する必要があることが判明した．本稿はその２点について報告する．
種別:
文献紹介
著者:
石綿敏雄
題名:
Luis Eguren, Olga Fernandez Soriano "Introduccion a una sintaxis minimista"
ページ:
295-296

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